株式会社tombow 代表
関 崚成

新潟県に生まれた私の幼い頃の遊び場といえばもっぱら大自然でした。
野山を駆け回ったり、友人とじゃれあったりと遊びに明け暮れていた私でしたが、そんな私をひときわ惹きつけてやまないのが昆虫でした。

彼らの生態に私は夢中でした。宇宙人のような見た目のヤゴが時間を経て美しいトンボとなり羽ばたいていく。ひとつの命が全く別のカタチとなり短い命を終えていく…
その姿に生命の神秘と緻密な生態の見事さを感じずにはいられませんでした。

昆虫の魅力は高校生となった私をなおもとらえて離しませんでした。
私はより深く昆虫の生態と彼らを育む環境のことが知りたくなり、昆虫と環境保全を学ぶことが出来る専門学校へ進学しました。

学ぶにつれ分かったのは世の中には僕が好きで追いかけていた虫たちとは異なる"害虫"と呼ばれる類の虫がいるということでした。
もちろん言葉としては知っていましたしどんな種が害虫とされているかも知ってはいました。しかし、僕らの生活のなかに害虫が入り込むことでどんな不利益がもたらされるかはよくわかっていませんでした。

勉強をする日々の中で私が害虫駆除を志すきっかけとなった2つの出来事が起こりました。

1つ目は在学中のある日、私が働いていたアルバイト先の飲食店に害虫駆除業者がゴキブリの駆除にやってきたことでした。
専門に学んでいる分野の実際の現場を見るまたとないチャンスに私は無理を言って施工現場に立ち会わせてもらいました。
実際に現場を見て、好奇心に駆られて業者の方に次々と質問する私でしたが業者の方から返ってきた答えは大変失礼な話ですがいまいち確信を突いていないものと感じてしまいました。

その時にやたらめったら薬を撒けばいいというわけではなく、正しい駆除対象の生態などの知識と正しい薬剤の知識の両輪がそろって初めてしっかりとした駆除ができるんだ、と実感しました。
この点において、自分で言うのはなんですが幼い頃から虫を撮り、飼育し、図鑑とにらめっこをして調べ続けていた経験と知識はそんじょそこらのやつに負ける気はしなかったのです。

2つ目はとある媒体で見た害虫駆除についての特集でした。
依頼を受けた害虫駆除業者が部屋の中に出た虫を駆除しに行くというものだったのですがそれに私は衝撃を受けました。
そこに映っていたのはたまたま外から入り込んであろう虫だったのですが、業者の方が依頼主に対して「繁殖するとマズいから早めの駆除をおすすめします。」と言っていたのです。
その種の生活環境とライフサイクルを考えるとどう考えても人間が暮らすような家屋の中で繁殖に向かない種だったのです。
害の無い虫を害虫とするような適当な発言がテレビで流れていいはずが無いと憤慨しましたが、ハッとしました。私のような知識のある人間でもなければプロを名乗る業者が嘘かどうかも分からないのです。

無知な消費者につけこんで駆除効果の薄い施工を行う悪徳業者がいることに強い怒りと危機感を覚えた私は自分自身の手でこの現状を変えようと心に決めました。

専門学校を卒業したあと害虫駆除業に身を投じてから4年間。2つの会社で施工実務に携わり知識と経験を積み重ねて参りました。
そして適切な駆除を適切な価格で世の中に広めるため、合同会社Tombowは2023年に産声をあげました。

屋内で繁殖する害虫の増加が危険視される一方、人間による開発の影響で野山に住む虫たちはその数を減らしています。
これは今でも休みがあれば県外でも出かけて昆虫採集をしている私にとっては全く他人事ではなく由々しき事態です。
絶滅の危機に瀕している種も多くあり、これらの種を守るため環境保全の活動にもこれから微力ながら尽力していきます。

ありがたいことに多くのお客様からご依頼を頂き、また感謝の言葉を頂いております。
私はこの仕事が好きですし、大きなやり甲斐と喜びをもって日々の職務に取り組んでいます。
しかしながら職業柄なかなか魅力が伝わりにくく、なり手の少ない仕事でもあります。
このTombowの事業を通じてより多くの人に害虫駆除業という仕事を知ってもらい、次世代の若者たちが目指したいと思えるような仕事にしたいと願ってやみません。

2023年03月09日